最終更新: 2026-10-28
健康増進施設とは、厚生労働大臣が認定する「国民の健康づくりに適した施設」を示す制度で、このうち運動療法に適した施設はさらに「指定運動療法施設」として指定を受けられる。指定運動療法施設では、医師の運動処方箋に基づく利用料が所得税の医療費控除の対象になる点が最大の特徴だ。パーソナルジム・フィットネスクラブの経営者にとっては、医療機関と連携した差別化施策になり得る一方、認定基準を満たすための体制整備が必要になる。本記事では認定団体の公式情報に基づき、制度の仕組み・基準・取得の流れを解説する。
健康増進施設認定制度とは?基本をわかりやすく解説

健康増進施設認定制度は、厚生労働省が国民の健康づくりを推進する目的で、一定の基準を満たす施設を認定する制度。認定機関は公益財団法人日本健康スポーツ連盟で、認定は厚生労働省への申請を経て行われる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 厚生労働省(認定機関:公益財団法人日本健康スポーツ連盟) |
| 類型 | 運動型健康増進施設/温泉利用型健康増進施設/温泉利用プログラム型健康増進施設の3類型 |
| 認定期間 | 10年間 |
| 全国の認定施設数 | 約350施設(日本健康スポーツ連盟、2026-10-28時点確認) |
3類型のうち、パーソナルジム・フィットネスクラブが対象となるのは主に「運動型健康増進施設」。運動型は「健康増進のための運動を安全かつ適切に実施できる施設」、温泉利用型は「温泉利用及び運動を安全かつ適切に実施できる施設」と定義されている(日本健康スポーツ連盟)。
運動型健康増進施設の認定基準
- 有酸素運動・筋力強化運動等の補強運動を安全に行える設備(トレーニングジム、運動フロア、プールの全部または一部と付帯設備)
- 体力測定・運動プログラム提供・応急処置のための設備
- 健康運動指導士その他運動指導者の配置
- 医療機関との適切な提携関係
- 継続利用者への健康状態把握・体力測定・運動プログラムによる指導
健康運動指導士の資格そのものについては、ジムのトレーナーに資格は必要?おすすめ7選を費用・難易度で比較でも取得方法・難易度を紹介している。
指定運動療法施設とは?健康増進施設との違い

指定運動療法施設は、厚生労働大臣認定健康増進施設のうち、運動療法を行うのに適した施設として追加の基準を満たし、指定を受けた施設を指す。つまり「健康増進施設の認定」がまず前提で、そのうえで「指定運動療法施設の指定」という上位区分が存在する二段階の制度だ。
| 項目 | 健康増進施設(運動型) | 指定運動療法施設 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 基本の認定区分 | 健康増進施設のうち追加基準を満たした上位区分 |
| 運動指導者の配置 | 健康運動指導士等 | 健康運動指導士+健康運動実践指導者 |
| 提携医療機関の医師 | 医療機関との提携関係 | 担当医が日本医師会認定の健康スポーツ医であること |
| 利用料金 | 基準なし | 1回当たり5,000円以内 |
| 利用対象 | 施設の方針による | 会員以外の利用も可能であること |
| 医療費控除 | 対象外 | 医師の処方に基づく運動療法が対象になり得る |
(出典:日本健康増進施設協会、2026-10-28時点確認)
指定運動療法施設の医療費控除|仕組みと手続き

指定運動療法施設で医師の運動処方箋に基づく運動療法を実施した場合、その利用料が所得税の医療費控除の対象になり得る。公益財団法人長寿科学振興財団の解説によると、具体的な流れは以下の通り。
1. かかりつけ医、または指定運動療法施設の提携医療機関の医師に相談し、運動療法処方箋を作成してもらう
2. 処方箋に基づき施設で運動療法を実施する
3. 利用終了後、施設から領収書・実施証明書を受け取る
4. 医師に実施証明書の確認書を発行してもらう
5. 確定申告時に、利用料金の領収書・実施証明書・確認書を税務署に提出する
なお、対象となる疾病の範囲や利用頻度・期間の基準については、情報源によって記載に差があり本記事では確定情報として断定できなかった。制度を利用する場合は、提携医療機関または最寄りの税務署に個別の適用条件を確認することを勧める。
業界の動き:取得支援サービスも登場

2026年10月、原宿でパーソナルジム「FRACTAL WORKOUT」を運営するフラクタルワークアウト株式会社が、パーソナルジム・フィットネス事業者向けに健康増進施設・指定運動療法施設の取得と運営に関する相談受付を開始すると発表した(2026-10-26付プレスリリース)。同社は自社ジムで2026年4月に健康増進施設の認定を取得し、2026年5月8日付で指定運動療法施設の指定を受けている。相談内容には、施設の設備・運動指導者の人数と資格・医療機関との関係を基準と照らし合わせた準備段階の支援から、取得後の医療機関との紹介体制づくりや医療費控除条件の説明方法まで含まれるとしている。
パーソナルジム単体でこうした認定・指定の取得に動く事例が公表されたことは、「医師から運動をすすめられた人の受け皿になりたい」という経営方針を持つ事業者が増えている可能性を示す動きといえる。
認定・指定の取得手順

日本健康スポーツ連盟が案内する認定の流れは以下の6ステップ。
1. 事前調査:施設が連盟に申請
2. 事前協議:連盟が厚生労働省と協議
3. 調査依頼:施設が連盟に調査依頼
4. 現地調査:連盟が施設を実地調査
5. 認定申請:施設が申請し、連盟が調査結果を省に報告
6. 認定:厚生労働省から認定通知
認定後の指定運動療法施設への指定は、健康増進施設の認定を前提に追加基準(健康運動実践指導者の配置、提携医療機関の医師が健康スポーツ医であること等)を満たした上で別途審査を受ける。認定期間はいずれも10年間で、更新時に改めて基準の確認が行われる。
ジム経営者が検討する際のポイント
- メリット: 医療機関と連携した「運動処方」の受け皿になれることで、医師の指示で通う利用者という新たな顧客層にアプローチできる。健康増進施設の認定自体が信頼性のアピール材料にもなる。
- 体制面のハードル: 健康運動指導士・健康運動実践指導者の配置、健康スポーツ医との提携、1回5,000円以内という利用料金の制約など、通常のパーソナルジム運営とは異なる体制整備が必要になる。
- 検討の進め方: パーソナルトレーナーとして開業する手順【2026年版】7ステップ完全ガイドでも触れた通り、健康増進施設の届出が必要になる場合があるため、開業・運営体制を検討する段階で早めに日本健康スポーツ連盟や日本健康増進施設協会に相談するのが実務的な進め方になる。
健康増進施設・指定運動療法施設に関するよくある質問
Q1: 健康増進施設と指定運動療法施設はどちらを取得すればいいですか?
まず健康増進施設の認定が前提となり、そのうえで追加基準を満たせば指定運動療法施設の指定を受けられる。医療費控除への対応を目的とするなら、最終的に指定運動療法施設の指定が必要になる。
Q2: 認定・指定の取得にはどれくらいの期間がかかりますか?
日本健康スポーツ連盟・日本健康増進施設協会への問い合わせが必要で、本記事で確認できた公式情報には具体的な審査期間の記載がなかった。事前調査から現地調査、申請、認定通知まで複数ステップを要するため、早めの相談が推奨される。
まとめ:健康増進施設・指定運動療法施設のポイント
- 健康増進施設は厚生労働省認定の制度で、運動型・温泉利用型・温泉利用プログラム型の3類型があり、全国で約350施設が認定されている(日本健康スポーツ連盟、2026-10-28時点確認)。
- 指定運動療法施設は健康増進施設のうち追加基準を満たした上位区分で、医師の処方に基づく運動療法の利用料が医療費控除の対象になり得る。
- 認定基準には健康運動指導士等の配置、医療機関との提携、指定運動療法施設では1回5,000円以内の利用料金などが含まれる。
- 取得には日本健康スポーツ連盟への申請から厚生労働省の認定通知まで複数ステップが必要で、認定期間は10年間。
- 医療費控除の対象疾病・利用頻度の基準は情報源により記載が異なるため、利用を検討する際は提携医療機関や税務署への確認が必要。
開業・経営体制全般についてはパーソナルトレーナーとして開業する手順【2026年版】7ステップ完全ガイドも参考にしてほしい。
参考情報
- 公益財団法人日本健康スポーツ連盟「健康増進施設認定制度」(https://www.kenspo.or.jp/nintei/、2026-10-28確認)
- 特定非営利活動法人日本健康増進施設協会「指定運動療法施設とは」(https://kenkou-zoshin.jp/pages/31/、2026-10-28確認)
- 公益財団法人長寿科学振興財団「医療費控除ができるスポーツクラブ利用料」(https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-undou/kenkou-zoushin-shisetsu.html、2026-10-28確認)
- フラクタルワークアウト株式会社「【パーソナルジム・フィットネス事業者の方へ】厚生労働大臣認定の健康増進施設・指定運動療法施設の取得と運営の相談受付を開始」プレスリリース(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000360.000118106.html、2026-10-26発表、2026-10-28確認)

